紹介
profile
「宏光」こと髙橋宏光
私は歌舞伎を主な題材にして合羽摺版画の制作をしています。合羽摺版画と出会ったのは、両親「父功・母添田敏子」が合羽摺版画家の第一人者である森義利の弟子で染色工芸作家であったからです。ただ当時、染色業界は斜陽と感じていたため、大学は法学部に進み、一般企業に就職しました。しかし体調を崩してしまい、二年ほどで退職。そのため、次へのステップを考える余裕も行動を起こす時間も無く、思い切って版画制作を始めたことが活動のきっかけとなりました。その後「’86版画期待の新人作家展」に入選。そのカタログを見た画廊ザ・トールマンコレクションと出会うことになります。このことが、合羽摺版画家として独り立ちすることを後押ししてくれることになりました。
私がまだ幼い頃、祖母が趣味だった歌舞伎鑑賞へ何度も連れて行ってくれました。私の歌舞伎との出会いです。本人は物心もついていない時期ですから、観たというのには無理があるかもしれません。しかし自然と歌舞伎の面白さにのめり込んでいたのでしょう。制作を始めるにあたって、当然のように題材として歌舞伎を選んでいました。
版画はすでに400点余りの作品を発表。帯や手拭いを制作するなど、版画以外にも活動範囲も広げています。近年では、東京はもとよりアメリカ、シンガポール、上海でも個展を開き、美術館の収蔵始め、国内外を問わず多くの方々に求められ、楽しんで頂いております。
合羽摺 [かっぱずり]
合羽摺は型染めの技法が発祥で、摺染めや吹絵紙(紙の上に切り抜いた型紙を置き、筆に絵の具を含ませ息を強く吹きかけ、形を表わした絵)を起源とし、奈良時代(8世紀)に遡ります。合羽摺という呼称は江戸時代には既に使われていて、木版画の「見当(版画を摺る際に紙を正確な位置・方向に置く基準となる目印)」が18世紀半ばに発明され、多色摺木版画(錦絵)が可能になるまで、木版で墨版を摺った上に色版を彫り抜いた型紙を宛てがい、刷毛で絵具を摺込み色彩を施す技法として、大津絵や浮世絵が盛んに作られていました。
今日の合羽摺版画は、これとは違い、型染めの技術を発展させ型紙のみを用いたもので、芹澤銈介や森義利らが現代版画として完成させ、型染めと一線を画するために、その呼称を用いた日本独特の技法です。
合羽摺と呼ばれるようになったのは、はっきりとしたことは解かりませんが、合羽の語源はポルトガル語の「Cápa」で、レインコートのことを指します。江戸時代、簡易型のレインコートは、紙に防水のため桐油(アブラギリの種を搾った油)を塗ったものだったので、合羽摺で使う型紙も同じ効果を狙い「柿渋」を塗ったことから、イメージとして「合羽Cápa」の文字を当てはめたようです。
この技法は、彫った部分に米粉糊(糠ともち粉を捏ねたもの)を置く防染のための型紙(和紙を数枚、耐水性・耐久性を持たせるため柿渋で張り合わせたもの)と、豆汁(ごじる-大豆を搾り取った液)で溶いた絵具[顔料]を刷毛で摺り込む彩色用に彫った型紙を使い、最後に紙ごと水に入れ、糊を洗い流し形象を現わすというものです。使用する紙は、和紙です。水に入れる必要があるため洋紙では適応できません。ちなみに私は、岩手の成島和紙と島根の石州和紙を使用しています。
略歴
1959 | 東京都中央区生まれ |
1982 | 日本大学法学部卒業 |
1987 | 個展 ザ・トールマンコレクション |
1988 | 日仏現代美術展 |
1990 | レトレッティ現代日本美術展「日本の美」 - フィンランド |
1990-92 | 空間国際ミニアチュール版画ビエンナーレ展 - 韓国 |
1991 | CWAJ現代版画展 |
1992 | ナパ国際ミニチュア版画展<買上賞> - U.S.A. |
1993-99 | ウッジ国際ミニチュア版画ビエンナーレ展 - ポーランド |
1993 | フレヘン国際版画トリエンナーレ展 - ドイツ |
1994 | クラコウ国際版画トリエンナーレ展 - ポーランド |
2007 | [ON THE CUTTING EDGE]現代日本版画展 - U.S.A. |
2011 | [The Artist’s Touch The Craftsman’s Hand]展 - U.S.A. |
収蔵
- ティコテン国立日本美術館
- ボストン美術館
- 米国連邦議会図書館
- ロサンゼルス・カウンティ美術館
- アッシュモレアン美術館
- メリーランド州立大学美術館
- ニュージーランド国立博物館
- ニュー・サウス・ウェールズ州立美術館
- シンガポール美術館
- ハンブルグ市立美術工芸博物館
- ウッジ市立美術館
刊行物
小説 | 「七重八重垣頼桜」碧天舎刊 |
技法書 | 「合羽版・型染めを作ろう」阿部出版刊 |
作品集 | 「The DyEing Art of Kappazuri at
Tolman
Collection」 ザ・トールマンコレクション刊 Lucas Martineau著 |
取り扱い画廊
ザ・トールマンコレクション
The
Tolman
Collection
住所 | 港区芝大門2-2-18 |
電話番号 | 03-3434-1300 |